橋本雅邦 《渓山雲霧》
最終更新日:2015年8月23日
制作年 明治30年代(1897-1906)
素材 紙本墨画
寸法 90.0cm×150.0cm
明治期の日本画壇において主導的な役割を果たした雅邦は、狩野派に学び、他流派や西洋画などを柔軟に取り込んで、近代的な日本画の一スタイルを目指した。山水や故事人物など漢画系の画題を得意としたが、雄大な山水世界を水墨技で表した本作品はその好例である。近景の樹林と主山との間を流れる濃霧の空気感が清々しく、面的な処理で明暗をつけ立体感を出した主山の表現、しなやかな筆致、なだらかな山容、柔らかな墨色など、温雅な雅邦作品の特徴がよく見てとれる。曲線を何本も連ねて山の質感を表す皴法や画面を構成する線質は、明治30年代前半から半ばの作品に類例を見い出せるが、制作期は広く明治30年代と見ておき、後考に俟ちたい。
(『川越市立美術館コレクション選』2012年 より)
