名称 |
銅造十一面観音懸仏 |
よみ |
どうぞうじゅういちめんかんのんかけぼとけ |
種別 |
市指定文化財 工芸品 |
員数 |
1面 |
所在地 |
笠幡 |
指定年月日 |
平成25年3月25日 |
所有者 |
個人 |
備考 |
懸仏は、本地垂迹説[ほんじすいじゃくせつ](注1)に基づいて造られたもので、神の依代[よりしろ]である鏡に本地仏が出現した姿を線刻や別鋳[べっちゅう]の仏像で表現している。 本資料は円形の鏡板と仏像を一体で鋳造した懸仏である。鏡板の直径は14.5cmを測る。鏡板の外縁には覆輪風[ふくりんふう]の縁、その内側に1条の圏線を巡らす。左右の肩には懸架用の耳を設ける。 鏡板の中央には十一面観音坐像を配する。十一面観音は、宝髻[ほうけい](注2)を結い、上段五個、下段六個の変化面を頂く。条帛[じょうはく]・天衣[てんね]・裙[くん]を身にまとい(注3)、胸前で合掌して蓮台上に結跏趺坐[けっかふざ]する。 鏡面表には以下のような銘がある。 (右) 奉懸稲荷大明神 有山 (左) 天文廿一年壬子四月吉日 天文21年は西暦1552年にあたる。 本資料は笠幡の旧家神田家に伝わったもので、元々は、同家に屋敷神として祀られる稲荷神社に奉納された可能性が考えられる。 また、本資料は作風から狭山市柏原に栄えた「柏原鋳物師[いもじ]」の製品と考えられる。神田家に近い尾崎神社には、同じ柏原鋳物師による天文20年の懸仏2面(市指定文化財)が伝来する。尾崎神社の懸仏とともに当地域に集中する柏原鋳物師の作例としてたいへん貴重である。 注1 仏・菩薩が衆生[しゅじょう]救済のために仮に神の姿をとって現れること(権現)だとする神仏習合思想から生じた説。 注2 菩薩などの仏像が頭頂に結んでいる髻[もとどり]。 注3 菩薩などの仏像ではふつうは上半身裸体で、左肩から右脇にかけて条帛をまとい、長い天衣を背面から前面にたらし、下半身は裙を巻きつける。 |