○川越市歴史的建築物の保存及び活用に関する条例

平成二十八年三月十八日

条例第二十一号

目次

第一章 総則(第一条・第二条)

第二章 保存建築物の登録等(第三条―第六条)

第三章 保存建築物等に関する制限

第一節 現状変更の規制(第七条・第八条)

第二節 保存のための措置(第九条―第十四条)

第四章 雑則(第十五条―第十九条)

第五章 罰則(第二十条―第二十三条)

附則

第一章 総則

(目的)

第一条 この条例は、歴史的価値を有する建築物の保存及び活用のための措置に関し必要な事項を定めることにより、当該建築物を良好な状態で将来の世代に継承し、もって本市固有の歴史的景観の保全及び文化の向上に寄与することを目的とする。

(定義)

第二条 この条例における用語の意義は、次項に定めるもののほか、建築基準法(昭和二十五年法律第二百一号。以下「法」という。)及び建築基準法施行令(昭和二十五年政令第三百三十八号)の定めるところによる。

2 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。

 対象建築物 次のいずれかに該当するものをいう。

 文化財保護法(昭和二十五年法律第二百十四号)第五十八条第一項に規定する登録有形文化財

 景観法(平成十六年法律第百十号)第十九条第一項に規定する景観重要建造物

 地域における歴史的風致の維持及び向上に関する法律(平成二十年法律第四十号)第十二条第一項に規定する歴史的風致形成建造物

 その他市長が前条の目的に適合するものとして指定するもの

 移築 建築物を他の敷地に移して新築することをいう。

 増築等 建築物の増築、改築、移転、移築若しくは用途の変更又は修繕若しくは模様替えをいう。

 保存建築物 対象建築物のうち、第四条第一項の規定による登録を受けたものをいう。

 保存対象敷地 保存建築物が存する敷地(次条第二項に規定する保存活用計画において、当該対象建築物を移築することとする場合にあっては、移築後の敷地)をいう。

第二章 保存建築物の登録等

(所有者による登録の申請)

第三条 対象建築物の所有者は、当該対象建築物の保存及び活用を図るため、法第三条第一項第三号の規定による指定を必要とするときは、市長に対し、当該対象建築物を保存建築物として登録することを申請することができる。

2 対象建築物の所有者は、前項の規定による申請をしようとする場合においては、次に掲げる事項を定めた当該対象建築物の保存及び活用に係る計画(以下「保存活用計画」という。)を記載した書面を市長に提出しなければならない。この場合において、対象建築物の所有者は、当該保存活用計画を策定するに当たっては、市長が定める指針に従わなければならない。

 当該対象建築物の名称及び概要

 当該対象建築物の所有者(所有者が二人以上いるときは、その全員。以下この章において同じ。)の氏名及び住所(法人にあっては、名称及び代表者氏名並びに主たる事務所の所在地)

 当該対象建築物の保存を図りながら、これを活用するために必要な増築等に係る工事の内容

 当該対象建築物の構造、防火、避難その他の安全性に関する事項

 当該対象建築物の管理に関する事項

 その他市長が当該対象建築物の良好な保存及び活用並びに当該対象建築物が存する敷地の周辺の環境の保全を図るために必要と認める事項

3 対象建築物の所有者は、第一項の規定による申請をしようとする場合において、その者以外に当該対象建築物が存する敷地(保存活用計画において、当該対象建築物を移築することとする場合にあっては、移築後の敷地)について所有権又は借地権を有する者があるときは、あらかじめ、当該申請の内容について、これらの者の同意を得なければならない。

(保存建築物の登録等)

第四条 市長は、前条第一項の規定による申請を受けた場合において、当該対象建築物の保存及び活用を図る必要があり、かつ、当該対象建築物の保存活用計画について用途上、構造上、交通上、安全上、防火上及び衛生上支障がないと認めるときは、当該対象建築物を保存建築物登録原簿に登録するものとする。

2 市長は、前項の規定による登録をしたときは、その旨を当該対象建築物の所有者に通知するものとする。

3 第一項の規定による登録を受けた保存建築物の所有者は、当該保存建築物に係る保存活用計画に従って、当該保存建築物の保存及び活用を図らなければならない。

4 市長は、第一項の規定による登録をしたときは、その旨を公告するとともに、規則で定めるところにより、一般の縦覧に供するものとする。

5 第一項の規定による登録は、前項の規定による公告によりその効力を生じる。

6 市長は、第四項の規定による公告をしたときは、当該保存建築物に係る法第三条第一項第三号の規定による指定を行うための必要な手続をとるものとする。

(登録事項の変更)

第五条 保存建築物の所有者は、保存活用計画の変更(規則で定める軽微な変更を除く。)をしようとするときは、市長に対し、登録事項の変更(以下この条及び第十七条において「変更登録」という。)を申請しなければならない。

2 第三条第三項の規定は、前項の規定による申請について準用する。この場合において、第三条第三項中「第一項の規定による」とあるのは「変更登録の」とする。

3 市長は、第一項の規定による申請を受けた場合において、当該申請の内容が当該保存建築物の保存及び活用を図るために必要であり、かつ、変更後の保存活用計画について用途上、構造上、交通上、安全上、防火上及び衛生上支障がないと認めるときは、変更登録をすることができる。

4 前条第二項第四項及び第五項の規定は、変更登録について準用する。この場合において、同条第二項中「前項の規定による登録」とあり、並びに同条第四項及び第五項中「第一項の規定による登録」とあるのは「変更登録」とする。

(登録の抹消)

第六条 市長は、保存建築物について、次の各号のいずれかに該当すると認めるときは、遅滞なく、当該保存建築物の登録を抹消しなければならない。

 法第三条第一項第一号又は第二号に規定する建築物に該当するに至ったとき。

 滅失、毀損その他の事由によりその登録の理由が消滅したとき。

2 市長は、保存建築物について、公益上の理由その他の特別の理由があると認めるときは、その登録を抹消することができる。

3 市長は、前二項の規定により保存建築物の登録を抹消したときは、その旨及びその理由を公告するとともに、当該抹消を受けた保存建築物の所有者に通知するものとする。

4 市長は、第一項又は第二項の規定により保存建築物の登録を抹消したときは、遅滞なく、当該保存建築物に係る法第三条第一項第三号の規定による指定を解除するために必要な手続をとらなければならない。

第三章 保存建築物等に関する制限

第一節 現状変更の規制

(許可申請)

第七条 保存対象敷地内において増築等をしようとする者又は保存建築物に関しその形状を変更し、若しくはその保存に影響を及ぼす行為をしようとする者は、あらかじめ、市長の許可を受けなければならない。ただし、通常の管理行為、軽易な行為その他規則で定める行為及び非常災害のため必要な応急措置として行う行為については、この限りでない。

2 市長は、前項の許可の申請があった場合において、当該申請に係る行為が、保存活用計画の内容と相違するときは、同項の許可をしてはならない。

3 市長は、第一項の許可の申請があった場合において、当該保存建築物の保存のために必要があると認めるときは、許可に必要な条件を付することができる。

4 第一項の許可は、法第六条第一項若しくは法第六条の二第一項(これらの規定を法第八十七条第一項において準用する場合を含む。)の規定による確認の申請又は法第十八条第二項(法第八十七条第一項において準用する場合を含む。)の規定による通知を要するものであるときは、当該申請又は通知をしようとする日までに受けなければならない。

5 第一項の許可に係る工事は、当該許可を受けた後でなければ、これを施工してはならない。

(完了検査)

第八条 前条第一項の許可を受けた者は、当該許可に係る工事を完了したときは、規則で定めるところにより、市長の検査を申請しなければならない。

2 前項の規定による申請は、同項の工事が完了した日から四日以内に市長に到達するようにしなければならない。ただし、申請をしなかったことについて規則で定めるやむを得ない理由があるときは、この限りでない。

3 前項ただし書の場合における検査の申請は、その理由がやんだ日から四日以内に市長に到達するようにしなければならない。

4 市長は、第一項の規定による申請があったときは、当該申請を受け付けた日から七日以内に、当該申請に係る保存建築物が当該許可の内容に適合しているかどうかを検査しなければならない。

5 市長は、前項の規定による検査をした場合において、同項の保存建築物が当該許可の内容に適合していることを認めたときは、その旨を第一項の規定による申請をした者に通知するものとする。

第二節 保存のための措置

(所有者の管理義務等)

第九条 保存建築物の所有者は、当該保存建築物を適切に管理しなければならない。

2 保存建築物の所有者が変更したときは、新たに所有者となった者は、速やかにその旨を市長に届け出なければならない。

3 保存建築物の所有者は、当該保存建築物の管理に関する責任者(以下この節において「保存管理責任者」という。)を選任することができる。

4 保存建築物の所有者は、前項の規定により保存管理責任者を選任したときは、速やかにその旨を市長に届け出なければならない。保存管理責任者を解任し、又は変更したときも、同様とする。

5 第一項の規定は、保存管理責任者について準用する。

6 保存建築物の所有者又は保存管理責任者は、その氏名若しくは名称又は住所を変更したときは、速やかにその旨を市長に届け出なければならない。

(記録の作成及び保存)

第十条 保存建築物の所有者又は保存管理責任者は、定期的に当該保存建築物の維持管理の状況に関する記録を作成し、これを保存しなければならない。

(報告等の徴収)

第十一条 市長は、必要があると認めるときは、保存建築物の所有者、管理者、占有者若しくは保存管理責任者又は建築主、設計者、工事監理者若しくは工事施工者に対し、当該保存建築物の現状若しくは管理又は第七条第一項の許可に係る工事の計画若しくは施工の状況に関して、報告又は資料の提出を求めることができる。

(管理に関する助言、勧告及び命令)

第十二条 市長は、保存建築物の所有者又は保存管理責任者に対し、当該保存建築物の管理に関する必要な助言を行うことができる。

2 市長は、保存建築物の構造若しくは建築設備又は保存対象敷地の管理が適当でないため当該保存建築物の損傷、腐食その他の劣化が進み、そのまま放置すれば保安上著しく危険な状態となり、又は衛生上著しく有害となるおそれがあると認める場合においては、当該保存建築物若しくは当該保存対象敷地の所有者又は保存管理責任者に対し、相当の猶予期限を付けて、管理の方法の改善その他管理に関し必要な措置をとることを勧告することができる。

3 市長は、前項の規定による勧告を受けた者が正当な理由なく当該勧告に係る措置をとらなかった場合において、特に必要があると認めるときは、その者に対し、相当の猶予期限を付けて、当該勧告に係る措置をとることを命ずることができる。

(監督処分)

第十三条 市長は、この条例の規定若しくはこれに基づく許可又は当該許可に付された条件に違反した保存建築物又は保存対象敷地内の保存建築物以外の建築物(以下この条及び第十八条において「保存建築物等」と総称する。)の建築主、当該保存建築物等に関する工事の請負人(請負工事の下請人を含む。次項において同じ。)若しくは現場管理者又は当該保存建築物等若しくは保存対象敷地の所有者、管理者若しくは占有者に対し、工事の停止を命じ、又は相当の猶予期限を付けて、建築物の外観の変更、除却、移転、移築、改築、増築、修繕、模様替え、使用禁止、使用制限その他違反を是正するために必要な措置をとることを命ずることができる。

2 市長は、この条例の規定若しくはこれに基づく許可又は当該許可に付された条件に違反することが明らかな増築等の工事中の保存建築物等については、緊急の必要があって川越市行政手続条例(平成九年条例第三号)第十三条第一項に規定する意見陳述のための手続をとることができない場合に限り、当該手続によらないで、当該保存建築物等の建築主又は当該工事の請負人若しくは現場管理者に対し、当該工事の停止を命ずることができる。この場合において、これらの者が当該工事の現場にいないときは、当該工事に従事する者に対し、当該工事に係る作業の停止を命ずることができる。

(権利義務の承継)

第十四条 所有者の変更により新たに保存建築物の所有者となった者は、この条例の規定により市長が行った助言、勧告又は命令その他の処分による当該所有者でなくなった者の権利及び義務を承継する。

第四章 雑則

(建築物の設計及び工事監理)

第十五条 第七条第一項の許可を受けた保存建築物の工事のうち、建築士法(昭和二十五年法律第二百二号)第三条第一項(同条第二項の規定により適用される場合を含む。第三項において同じ。)、第三条の二第一項(同条第二項において準用する同法第三条第二項の規定により適用される場合を含む。第三項において同じ。)又は第三条の三第一項(同条第二項において準用する同法第三条第二項の規定により適用される場合を含む。第三項において同じ。)に規定する建築物の工事は、それぞれ当該各条に規定する建築士の設計によらなければ、することができない。

2 第七条第一項の許可を受けた保存建築物の工事のうち、建築士法第二条第七項に規定する構造設計図書による同法第二十条の二第一項の建築物の工事は、構造設計一級建築士(同法第十条の二の二第四項に規定する構造設計一級建築士をいう。以下この項において同じ。)の構造設計(同法第二条第七項に規定する構造設計をいう。以下この項において同じ。)又は当該保存建築物が構造関係規定(同法第二十条の二第二項に規定する構造関係規定をいう。)に適合することを構造設計一級建築士が確認した構造設計によらなければ、することができない。

3 第七条第一項の許可を受けた保存建築物の建築主は、第一項の工事をする場合においては、それぞれ建築士法第三条第一項、第三条の二第一項又は第三条の三第一項に規定する建築士である工事監理者を定めなければならない。

(工事現場における許可の表示等)

第十六条 第七条第一項の許可を受けた保存建築物に係る工事の施工者は、当該工事現場の見やすい場所に、規則で定めるところにより、当該保存建築物の建築主、設計者、工事施工者及び工事の現場管理者の氏名又は名称並びに当該工事に係る同項の許可があった旨を表示しなければならない。

2 第七条第一項の許可を受けた保存建築物に係る工事の施工者は、当該工事の施工に伴う地盤の崩落、建築物又は工事用の工作物の倒壊等による危害を防止するために必要な措置を講じなければならない。

(消防長の意見の聴取)

第十七条 市長は、第四条第一項の規定による登録、第五条第三項の変更登録又は第七条第一項の許可をしようとする場合においては、消防長に意見を聴くことができる。

(立入調査等)

第十八条 市長は、この条例の施行に必要な限度において、市長が指定する職員に、保存対象敷地又は保存建築物等に立ち入り、その状況を調査させ、必要な検査をさせ、又は関係者に質問させることができる。ただし、住居に立ち入るときは、あらかじめ、その居住者の承諾を得なければならない。

2 前項の規定により立入調査、立入検査又は質問をする職員は、その身分を示す証明書を携帯し、関係者の請求があったときは、これを提示しなければならない。

3 第一項の規定による立入調査、立入検査又は質問の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない。

(委任)

第十九条 この条例の施行に関し必要な事項は、規則で定める。

第五章 罰則

第二十条 第十三条第一項又は第二項前段の規定による市長の命令に違反した者は、五十万円以下の罰金に処する。

第二十一条 次の各号のいずれかに該当する者は、二十万円以下の罰金に処する。

 第七条第一項の規定に違反して、同項の許可を受けないで、保存対象敷地内において増築等をし、又は保存建築物に関しその形状を変更し、若しくはその保存に影響を及ぼす行為をした者

 第七条第三項の規定により許可に付された条件に違反した者

 第八条第一項の規定による申請をせず、又は虚偽の申請をした者

 第十一条の規定による報告若しくは資料の提出をせず、又は虚偽の報告若しくは資料の提出をした者

 第十二条第三項又は第十三条第二項後段の規定による市長の命令に違反した者

第二十二条 第十八条第一項の規定による立入調査若しくは立入検査を拒み、妨げ、若しくは忌避し、又は質問に対して陳述せず、若しくは虚偽の陳述をした者は、十万円以下の罰金に処する。

第二十三条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従事者が、その法人又は人の業務に関し、前三条の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対しても、各本条の罰金刑を科する。

1 この条例は、平成二十八年十月一日から施行する。

2 この条例の施行の際現に解体され、その建築材料の全部又は一部が保管されている建築物で、当該建築材料の全部又は一部を用いてその原形を再現しようとするものについては、解体されていないものとみなして、この条例の規定を適用する。

川越市歴史的建築物の保存及び活用に関する条例

平成28年3月18日 条例第21号

(平成28年10月1日施行)

体系情報
第10編 設/第2章 都市計画・公園
沿革情報
平成28年3月18日 条例第21号